「用途地域」とは?住宅購入時はその種類と制限をチェック!

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「用途地域」という言葉を聞いたことがありますか?

不動産や建築関係の資格試験の勉強をしていると必ず出会う言葉です。

都市計画法や建築基準法などの法令によって土地利用にはさまざまな制限が定められており、そのなかで最も基本となるものがこの用途地域による建築物の用途制限です。
用途地域とは、さまざまな用途の建築物が無秩序に混在することを防ぎ、地域ごとに合理的な立地規制、用途規制を行うために各地域を区割りした上で、それぞれの地域に建築できる建物の制限をかけている法規制のことです。

資格試験を受けるのでなければこれらの内容を細かく覚える必要はありませんが、これから土地や住宅を購入あるいは新築しようとするのであれば、少なくとも「用途地域によって建てられるものが違うこと」および「用途地域が住環境を左右すること」は理解しておく必要があります。
今回はこの「用途地域」について、住宅を購入するときの注意点もふまえながら、それぞれの違いなどを説明してみたいと思います。

用途地域は12種類

行政によって用途地域が指定されていることにより、純然たる住宅地のなかにいきなり周囲の様子を一変させるような店舗や風俗営業店あるいは工場などがつくられることはなく、一定の生活環境が守られています。
都市計画法に定められた用途地域は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域の12種類があり、それぞれの用途地域における建築制限・用途制限の具体的な内容は、建築基準法や政令などによって定められています。

 

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用途地域は全部で12種類ありますが、大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」に分類されます。全国合計で最も指定面積が広いのは「住居系」で約60%、次いで工業系が約25%となっており、地価動向などでは目立つ存在の「商業系」は約15%で面積の割合でみればそれほど広くはありません。

それぞれの用途地域の特徴

12種類の用途地域のうち、住宅を建てることができないのは工業専用地域だけで、他の用途地域であれば一戸建て住宅もマンションも建てることができます。
ただし、住宅地としての環境は大きく異なりますから、それぞれの特徴をよく考える必要があります。

それでは各用途地域ごとの特徴や実際の街並み(googlストリートビュー)を細かくみていきましょう。

 

第一種低層住居専用地域

一般の住宅のほか、小規模な兼用住宅(店舗・事務所など)、小・中・高等学校、老人ホーム、診療所などを建てることができます。住宅地の環境として最も優れた地域であり、建物の高さは10メートル(一部は12メートル)に制限されるため、2階建ての一戸建て住宅が大半を占めます。

容積率や建ぺい率の制限や建物の高さ制限などが他の用途地域よりも厳しく、あまり高い建物が建つこともないため、住宅地の環境として最も優れた地域です。分譲マンションが建設されることもありますが、3階建て程度の低層マンションが中心となり、「閑静な住宅街」といったイメージです。
その代わりに、一定規模以上の店舗や病院なども建てられず、小規模な住宅兼用店舗を除いてコンビニエンスストアなども立地することができません。
そのため、第一種低層住居専用地域が広範囲に指定されたエリアの中心あたりに住んでいると、静かな住環境を得られるかわりに、日常のちょっとした買い物などにも不便を感じることがあることを覚えておきましょう。
また、屋根を備えた独立車庫なども建てられないので自分の敷地内に車庫がなく月極駐車場などを借りなければならない場合、たいていは平面の屋根なし駐車場となります。また、必ずしも町並みが整えられているわけではなく、細い街路に沿って住宅が密集している場合も多くある地域です。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)は30%~60%、容積率(敷地面積に対する、建物の床面積の合計(延床面積)の割合)は50%~200%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の緩和あり)

 

第二種低層住居専用地域

第一種低層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、150平方メートルまでの一定の店舗や飲食店なども認められる地域です。第一種低層住居専用地域に比べ、3階建ての住宅やアパートなどが増えてくる印象です。小規模な店舗や飲食店などが立地する場合もあります。低層のマンションが建てられることもありますが、どちらかといえば分譲よりも賃貸マンションのほうが多いでしょう。
第一種低層住居専用地域に比べて、少し利便性の高まる地域だともいえますが、実際に指定されているところはごくわずかです。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は30%~60%、容積率は50%~200%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

第一種中高層住居専用地域

低層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、病院や大学、500平方メートルまでの一定の店舗なども認められます。また、2階以下かつ300平方メートル以下の自動車車庫も建てることができます。建物の高さや容積率の制限が低層住居専用地域よりも緩やかになり、分譲マンションなども目立つようになりますが、一戸建て住宅も数多く存在しています。都市部では中高層マンションも比較的多く建てられています。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は30%~60%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

第二種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、1,500平方メートルまで(2階以下)の一定の店舗や事務所なども認められます。ある程度の住環境水準を維持しつつ、日常生活の利便性も高まる地域です。第一種中高層住居専用地域との違いは分かりづらいですが、ある程度の大きさの店舗や事務所などの混在も進んできます。やや広めの通り沿いに指定されていることも多いでしょう。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は30%~60%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

第一種住居地域

3,000平方メートルまでの店舗や事務所、ホテル・旅館などのほか、50平方メートル以下の小規模な工場などを建てることもできるようになりますが、基本的には住居主体の地域です。指定面積が最も広く、大規模なマンションも数多くみられます。

住居系の用途地域でありながら制限は比較的緩やかで、大きめの店舗なども目立つようになります。大規模なマンションが増える反面で、一戸建て住宅の割合はだいぶ減ってきます。残った一戸建て住宅は、3階建てや4階建ての鉄筋コンクリート造が多くみられるようになります。この地域は「近隣商業地域」に隣接して指定されることが多く、商店街の一部に組み込まれている場合もあります。そのときは「商店街のはずれ」といった雰囲気になることがあります。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は50%~80%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

第二種住居地域

住居地域でありながら、パチンコ店やカラオケボックスなどの立地も認められる地域です。この地域内の物件を検討するときには、より慎重に周辺の環境を確認することが大切です。制限はさらに緩やかとなるため、大きな幹線通り沿いに指定されることが多いです。(ストリートビューは東京の環状7号線)オフィスビルや店舗に混じって住宅がぽつぽつと存在するイメージです。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は50%~80%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

準住居地域

住居系地域の中では最も制限が緩やかであり、営業用倉庫、小規模な自動車修理工場・劇場・映画館なども認められる地域ですが、実際に指定されているところはごくわずかです。比較的大きなマンションやオフィスビル、店舗などが混在しますがオフィス街でもなく、商店街でもなく、かといって住宅街でもない、というなんとも微妙な地域です。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は50%~80%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

近隣商業地域

周辺の住民が日常の買い物をするためのお店やスーパーなどが多くなります。商店街が形成されることもあり、やや賑やかな環境になるでしょう。日常生活の利便性は高まりますが、150平方メートルまでの工場なども立地できる地域です。駅前通りの商店街などが一般的に「近隣商業地域」に指定されています。場所によってそれぞれの特徴は大きく異なるでしょうが、店舗併用住宅も少なくないため一戸建て住宅やアパート、小ぶりな賃貸マンションなどが混在している場合もあります。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は60%~80%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

商業地域

主に都心部や主要駅の周辺が指定され、多くのビルが立ち並ぶ地域です。一定の工場などを除いて、ほとんどの用途の建築物を建てることができるため、周辺の環境や隣接地の建築計画などにはとくに注意しなければなりません。中高層マンションだけではなく20階建て以上の超高層マンションも数多く建設されていますが、基本的には住環境が重視されることのない地域であり、日影規制など日照を保護するための規定も適用されません。加えて相対的に地価が高くなるため、一戸建て住宅はほとんどみられなくなります。他のエリアから人が集まる「繁華街」の場合が多く、東京でも都心部を除けば「商業地域」の指定はそれほど多くありません。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は80%、容積率は200%~1300%です。(角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

準工業地域

商業地域と並んで用途の幅が広く、一定の風俗営業店と危険性や環境悪化のおそれが大きい工場などを除いて、ほとんどの用途の建築物を建てることができます。マンションの供給も比較的多い地域ですが、昔からの町工場が集まっている場所など居住者の多い市街地のなかで指定されている例も少なくありません。

平日と休日で様相が大きく異なる場合もありますから、ここに住宅を購入する場合は曜日を変えて複数回の現地チェックをすることが大切です。比較的小規模な工場が多く混在するものの、環境を悪化させるようなものは建てられないため、危険性・環境悪化のおそれが大きい花火工場や石油コンビナートなどは建設できません。そのためマンションや一戸建て住宅も数多く存在しています。工場を誘致する地域というよりも、「昔から町工場が多い住宅地」に指定されていることが多いうようです。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は50%~80%、容積率は100%~500%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

工業地域

学校や病院、ホテル、映画館などが建てられなくなる代わりに、どのような工場でも建てることができるようになります。住宅の立地は認められているため、工場跡地の再開発などで大規模なマンションや一戸建て住宅が分譲されることもありますが、環境を悪化させる工場や危険性の高い施設も建てることができるため、周辺環境には十分な注意が必要です。
敷地のまわりだけでなく、最寄り駅へ行くまでの間についても環境やトラックの交通量など、よく観察することが大切です。また、商業地域と同様に日影規制などが適用されません。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は50%~60%、容積率は100%~400%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

工業専用地域

唯一、住宅を建てることができない用途地域です。

工業の業務の利便の増進を図る地域で基本的にどんな工場でも建てられます。住宅・物品販売店舗・飲食店・学校・病院・ホテル等は建てることはできません。ここで住宅を購入することは考えられませんが、工業専用地域を通り抜けた先に住宅が存在する場合もあるため、交通面や環境面での注意が必要です。京浜工業地帯などに代表される湾岸地域などがこれにあたり、花火工場などの危険性が極めて大きい工場もこの地域に建設されます。

この用途地域に建築できる建物の建ぺい率は30%~60%、容積率は100%~400%です。(防火地域内の耐火建築物や角地に建築する建物については10%の建ぺい率の緩和あり)

 

敷地が2種類以上の用途地域にまたがる場合は要注意

ちょうど用途地域の境目で、ひとつの敷地が2種類以上の用途地域にまたがる場合には、敷地に占める面積の割合が大きいほうの用途地域の内容が、その敷地全体に対して適用されることになります。

このようなときには売買契約締結前に宅地建物取引士が行なう重要事項説明で、敷地にかかる用途地域のすべてが説明されますが、売地や中古住宅では、測量を待たないと詳細な面積割合が分からないことがあり、実際に適用される用途地域がどちらなのか曖昧なままで説明を終えてしまうケースもあるかもしれません。
住宅を建てる目的の敷地であれば、結果的に「どちらの用途地域でも建つ」ということで済む場合もあるでしょうが、店舗や事務所など住宅以外の建築物を建てる目的のときには、売買契約を締結する前に明確な結論を出してもらうことが必要です。
売地の広告などでも、2つの用途地域を併記しているだけのケースがあるのでどちらの用途地域の規制が適用されるのか購入前によく確認しましょう。

 

都市計画図を自分で確認することも必要

用途地域に関して特に問題が起きやすいのは、売買対象の敷地に第一種低層住居専用地域など住居系の用途地域が指定されていて、隣地や道路をはさんで向かい側、あるいは敷地にわりと近いところが異なる指定を受けている場合です。
「売買対象の敷地の環境などに影響を及ぼすもの」については重要事項説明に加えることが原則だとはいえ、対象敷地にかからない用途地域の内容までの説明義務は無いため、実際に説明されるかどうかはその不動産業者次第、といった面があります。

大都市部では、用途地域が複雑に入り組んで細かく指定されているため、第一種低層住居専用地域の隣が商業地域となる極端な例もあります。
優れた住環境のつもりで第一種低層住居専用地域内の住宅を購入したが、道路をはさんで向かい側にいきなり風俗店ができたり、一晩中ネオンが輝き続ける飲食店が建ってしまった、という話も実際に有り得るので注意が必要です。
特に都市部の住宅を購入する前には、できるかぎり自分の目で都市計画図などをみて、周辺の用途地域も確かめるようにしましょう。
都市計画図は各自治体の都市計画課などへ行けばみられるほか、地域の図書館などでも閲覧できます。また、最近ではインターネット上で公開する自治体も次第に増えているので必ず契約前に一度は自分の目でチェックするようにしましょう。

 

東京の用途地域は以下の東京都都市整備局のサイトで確認することができます。

 

都市計画情報等インターネット提供サービス

https://www2.wagamachi-guide.com/tokyo_tokeizu/

 

いかがでしたでしょうか。

今回ご紹介をした12種類の用途地域の他にも、不動産の取引や利用には多くの法規制がからみます。家を建てることができる地域やできない地域や特定の商売をできる地域やできない地域などすべて都市計画関連の法令によって定められているので、それを理解していないとある日突然足元をすくわれてしまうことがあります。不動産取引や利用の際には最低限の知識は身につけて、事後に後悔だけはしないようにしましょう。