日本の常識は世界の非常識?海外の賃貸事情とは~東アジア編(下)

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前回の多摩ひろばでは海外の賃貸市場に目を向けて、韓国と中国の賃貸事情をご紹介しました。日本との商慣習の違いに驚いた人も多かったのではないでしょうか。

今回は前回の続編として、近年の経済発展が目覚ましくグローバル企業のビジネスマンの赴任先となることが多い東南アジアの国、シンガポールとタイの賃貸事情について調べてみました。

 シンガポールの場合-外国人駐在員も増加する都市の賃貸事情は…

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街が美しく、住みやすいことで知られているシンガポール。ビジネスで進出する企業も多く、日本人も多く暮らしています。中国と同様、この国の持ち家率も高く、約8~9割と言われています。シンガポールで持ち家率が高い理由のひとつは、政府が「HDB(Housing&Development Board)という日本でいうところの公営団地のようなマンションを購入する人に対して、補助を行っているからです。条件にもよりますが、一部屋あたり300万円前後の補助を受けることができ、住宅購入の頭金に充当できます。

社会人になっても親と一緒に住む文化と、HDBは結婚しないと購入できないことから、結婚と同時にHDBに申し込むのがシンガポールでは一般的。そのため賃貸住宅に住むシンガポール人は何らかの事情で親と同居しない人や経済的理由でHDBを手放した人たちだといいます。また、HDBはシンガポール人や永住権保持者しか購入できないということもあり、結果、賃貸住宅に住むのはほとんどが外国人、ということになります。

外国人の多くが住んでいるのはコンドミニアムという日本の高級マンションのような住宅です。リゾートホテルのような高級感あふれる外観で、セキュリティも整っており、プールやジム、バーベキューピットなどの豪華な施設が完備されていることも多いです。

家具付きの物件も多くあるために、駐在で数年間住むだけの人は、そうしたタイプの住宅を選ぶこともできます。部屋タイプはさまざまですが、2〜3ベッドルーム(2〜3LDK)が人気で、バス・トイレも2つずつ付いている場合が多いです。なかには、メイドさん専用の部屋やバス・トイレが付いている場合もあります。
ちなみに、こちらの物件は広い部屋が多く、70平米以下の物件は非常に少ないために、単身で滞在する場合は、ルームシェアをする人も多いようです。

コンドミニアムの場合、どんなに安くても月々の家賃に20万円以上かかるのが一般的で、日本人が多く住むエリアだと40万円前後かかることも多いです。先ほどのHDBの場合も、場所にもよりますが賃貸で月30万円前後かかることは珍しくなく、おかげでシンガポールは家賃がとても高い、という印象を強く受けています。

賃貸物件の契約時は、日本の敷金のように、家賃2ヶ月分(Deposit:デポジットと呼ばれ、退去時に返却される)と仲介料として家賃1ヶ月分支払う必要があります。
また、賃貸契約期間は原則2年間とされており、それより短いと、良い条件の物件は見つけにくくなる傾向にあります。2年間の契約期間中は、一定の期間より前に事前告知すれば退去できる日本とは違い、自己都合による退去は認められていません。ただし、転勤などの特殊事情の場合、契約後の一定期間を経た後に契約を解除できる特別条項(ディプロマティック・クローズ)を契約書に盛り込む事は可能。ただしその場合も、契約時に貸主が仲介業者に支払った仲介料を弁済するというかたちで、日割りで保証する必要があります。

また、別の視点で住まいをみると、シンガポールでは、蚊に刺されるとデング熱にかかるリスクがあるので、低層階に住む場合は注意しましょう。刺されることに注意するだけではなく、シンガポールでは政府の役人が一般の住宅に抜き打ち検査に来て、プランターなど蚊が発生しやすいものを家の中に置いていないか、質問してくることがあります。シンガポールは罰則が多い国として有名ですが、蚊の発生を防止しなかった場合、初犯1万ドル(約80万円)以下の罰金、または6カ月以下の禁固、もしくはその両方、という重い罰を受けなければならないリスクがあるため、多くの集合住宅では、定期的に除草剤のようなものをかけて蚊の防止に努めています。国民の健康に対する国の管理が行き届いている、とも言えますが、日本人の感覚だと「そこまでやる?」というのが正直なところでしょう。

タイの場合-圧倒的に安い家賃!日本では考えられない生活が可能

Thailand Bangkok Wat Arun temple detail

タイではコンドミニアムまたはアパートを賃貸で借りることができます。タイでいうコンドミニアムとは、日本でいうところの分譲賃貸住宅になります。日本でも大きなマンションなどは分譲販売され、それぞれの部屋のオーナーが賃貸に出したりしていますが、それと同じです。

そしてアパートは建物全体を一人のオーナー、もしくは会社が管理している物件になります。ここも日本の賃貸アパートをイメージしていただければと思います。大都会バンコクは、たくさんのコンドミニアムやアパートがありますが、供給過多の傾向にあり東南アジアでも家賃が安い地域です。しかし物件のクオリティは東南アジアでも指折り。かなりコスパが良いのが嬉しいポイントです。

タイの賃貸物件を初めて見ると、とにかく部屋の広さに驚きます。
単身者向けのコンドミニアムでも40~50㎡程度が普通です。家族向け3LDK(3 Beds Room)なら120~200㎡、それ以上大きい物件も数多くあります。天井も日本より高いので、部屋がより大きく感じることでしょう。初めて見た物件が値段のわりに広いからといって、いきなり契約しないほうがよいです。

タイの賃貸住宅では予め備え付けの家具があるのが基本。通常ベッド・棚などは自分で買う必要がありません。ある程度の物件であればテレビ・冷蔵庫・ソファーなども備え付けとなっており、残りの細かなものだけ自分で揃える形になります。

自宅にプールがあると聞くとびっくりするかもしれませんが、タイではごく当たり前のことです。1万バーツ(約3万1千円)以上の物件なら、プールやジムが付いてくることが多いです。日本人を顧客として想定している物件では、オーナーが日本のテレビ視聴サービスを用意してくれることがあります。また、インターネット環境もオーナーや建物が事前に用意している物件も多くあります。

こういった感じで部屋についてはいたれりつくせりのような印象を受けますね。では探し方や契約内容についてはどうでしょう。

日本では不動産屋を通すと契約者が手数料を負担するのが普通ですが、タイではこの仕組みはありません。不動産業者は契約成立すると賃貸オーナーからコミッションを得る仕組みとなっています。よって契約者の手数料負担はありません。

タイでの賃貸契約は非常に簡単です。アパートであれば、パスポートとデポジット(敷金)1~2か月分と前家賃1か月分さえ用意できれば、その日の内に入居が可能です。日本のように保証人や、勤務先の在籍確認など面倒なことは一切ありません。デポジットは契約期間満了時に返金されますが、中途解約した場合や、退去時に契約者の過失で補修が必要な場合等は日本と同様、デポジット返金がないことがあります。

また、単身者向けの安いアパートについては、基本的に紹介をしてくれる不動産業者はありません。コンドミニアムなどのファミリータイプの高級物件に関しては不動産業者がありますが、単身向けの1万バーツ以下の物件を探すには直接自ら探すのが基本となります。また、日本のように賃貸物件の雑誌も発行されていませんので直接物件に出向き、空き室があるか聞き歩く開拓型が基本となります。

タイでは基本的に建物内は火気厳禁となっています。
外食や屋台や食堂の持ち帰りで済ませる人も多いこともあり、安めの物件は流しがあるだけでガスコンロなどの備え付けがないことがほとんどです。1万バーツ程度の家賃の場合、プールはついているがキッチンはないという物件もザラです。そういった物件の場合、バルコニーでIHクッキングヒーターで簡単な料理する人が多いようです。

 

いかがでしたでしょうか。

国や文化によって異なる賃貸事情。日本では「借地借家法」という法律もあり、借主保護の考えがなかば当たり前の中で生活していますが、海外ではそうした法律や借主保護の考えすら無い場合も多いことがわかります。入居時に家賃をまとめて払い、退去時に戻ってくる制度や、突然大家から退去を命じられるというのは日本では考えられないでしょう。
どちらが良いとか悪いとかは置いておいて、住まいについての考え方は、文化や国民性の違いをダイレクトに感じさせられる部分です。転勤などで海外に住む可能性もあるかもしれない人は、「お国柄」が表れるこうした住宅事情を事前に知って準備しておくことで、文化や国民性の理解を深めることにもつながるでしょう。